聴導犬
 聴導犬とは、聴覚に障害を持った人に音を知らせる訓練を受けた犬です。
 パートナーとして共に暮らし、生活するのに必要な音を教えてくれる聴導犬は、聴覚障害者の自立への意欲や安心感も高めてくれる存在です。
 家の中では呼び鈴やお湯の沸いた音や赤ちゃんの泣き声や非常ベルの音など、屋外では銀行や役所などで名前を呼ばれた時などをユーザーに教えてくれます。
聴導犬は時間や場所に関わらず助けてくれる頼もしい伴侶となります。


育成の考え方
 私達は犬に余分なストレスをかけない様に必要以上の仕事は教えません。体罰や厳しく叱る訓練方法は行いません。遊びを取り入れた体力アップの訓練も必修科目です。 一人一人のユーザーの声を聞きながら、一頭一頭の候補犬の状態を見ながら訓練プログラムを組み、楽しく働ける肉体と精神状態を作る事が大切と考えているからです。
 聴導犬は大切な2つの仕事を持っています。
 1つはユーザーの音の介助です。仕事をする事が大好きな聴導犬にするためには、信頼できる人間に可愛がられ充分なケアーを受けられることが不可欠です。深い絆が築ける様にサポートを行っていきます。
  2つめは心の介助です。ユーザーが「この子といれば安心」 「この子といれば出かけられる」と実感し、積極的な人生に変えてくれることです。ユーザーの周りの人々にも理解を深め、暖かい交流が広がることも願っています。
  協会はユーザーと聴導犬がより充実した生活が送れることを目指し、実働中から引退後までサポートしていきます。

育成の期間
  誕生〜約3ヶ月   繁殖ボランティア、ブリーダーの元から選別
  約3ヶ月〜約12ヶ月  パピーウォーカーの元で飼育
  約12ヶ月〜約18ヶ月  協会に戻る ― 基礎訓練と動作訓練 ― 聴導犬選別
 約18ヶ月〜  ユーザーとの組み合わせ決定
 約18ヶ月〜約21ヶ月  動作訓練(ユーザーの必要としている音のみを訓練)
 約21ヶ月〜約23ヶ月  合同訓練(ユーザーと聴導犬の訓練)
 約23ヶ月〜約24ヶ月  微調整期間 ― ユーザーとの協会認定試験 ― 合格 ―
  厚生労働省介助犬認定試験 ― 合格『聴導犬』実働
 約2歳〜約10歳  アフターフォロー(再訓練等
 約10歳  引退(里親ボランティア、ユーザー宅でペットとして生活)
  ※上記の期間は、あくまでも基本で犬の能力やユーザーの体調等で変わってきます。
  ※基礎訓練期間中に不適格となった犬は、パピーウォーカー先か里親ボランティアの元に引き取られます。



  適正について
 健康で体力があること。気質が穏かで人間が好き、どんな環境でも落ち着いていられる、人のために作業するのが好き、などの適性を備えていることが聴導犬になる基本条件です。
 また求められる仕事の内容や、ユーザーとなる障害者の障害や生活パターンにより、選ばれる犬の体格や性格は少しずつ異なってきます。被毛の手入れが容易なことも大切な要因です。

  子犬時代につて


 子犬は一般家庭(パピーウォーカー)で、家族の一員として愛情を注がれて育てられます。
 人間との関わり方、社会性など生活の基本を愛情で教えてもらいます。

  訓練について
  生後1年前後から、体罰や厳しい叱責を使わずに訓練を行なっていきます。 訓練は大まかに一般的な服従訓練、将来遭遇する人ごみや騒音での訓練、動作の訓練終了後、(全ての候補犬が最後まで訓練を受けられる訳ではありません。仕事を持つよりは家庭犬が向いていると判断された子は里親さんの元に行きます)相性や犬の得手不得手を考慮してユーザーとの組み合わせを決めます。その後、ユーザーの環境に合わせて訓練を調整していきます。

 合同訓練について
  合同訓練 最後にユーザーと犬との合同訓練(実際の生活と職場などでの訓練も行う)を行います。合同訓練はユーザーと犬の信頼関係を作り、ユーザーが基本的な犬の扱い方を学ぶ重要な期間です。

 介助犬認定試験について
 現在、厚生労働省から認定を受けた機関が幾つかあり、そこで聴導犬の試験を受けることになります。合格後は聴導犬として実働することができます。

 ユーザーの責任について
 ユーザーは訓練が終了しても犬の基本的な訓練を維持し、活用しなければ本当の聴導犬の効果は発揮できません。またユーザーは犬を適切に管理し、周りに迷惑をかけたり不快感を与えたりしないようにコントロールする責任もあります。
環境の変化もありますその場合はトレーナーが再訓練を行いますが、ある程度ユーザー自身が犬とのコミュニケーションを考えたりしなければなりません。
  聴導犬の実動期間中はユーザー・聴導犬・協会・トレーナーが協力し続ける必要があります。

 引退について
  一般的に聴導犬は10歳程度(個体差や色々な条件で変わってきます)迄、ユーザーのもとで働くことができます。
 引退した犬は協会からボランティア家庭に引き取られるか、引退後もユーザーの家庭犬として飼い続ける場合もあります。